アメリカのコーヒー文化とサステナビリティ
1日の始まりやリラックスしたい時、自然と気分を切り替えてくれるコーヒー。
お店でも楽しめるものの、お湯を注ぐとプクッと膨らむ豆の様子、ふわりと部屋に広がる香りとその時間を独り占めできるのは、ハンドドリップならではの楽しみです。
せっかくゆっくりと豊かな時間を過ごすならこだわりのコーヒーを楽しみたいもの。
近年では生産過程や淹れ方にこだわり、味わうことや楽しむことを目的としたサードウェーブコーヒーにスポットが当たっていることをご存知でしょうか?
そこで今回はアメリカのコーヒー文化に触れながら、コーヒーに想いを馳せてみましょう。
「アメリカのコーヒー文化」と言われれば、私たちはアメリカンコーヒーを連想するのではないでしょうか。
このアメリカンコーヒーという言葉は実は日本で作られたそう。一般的に、浅煎り〜中煎りの豆を使用する、酸味の強いすっきりとした味わいが特徴のコーヒーとして広く知られています。
アメリカでコーヒーの大量生産、大量消費が行われていた19世紀後半〜20世紀前半頃。「第1の波(ファーストウェーブ)」の時代にこのような豆が使われたことから「アメリカンコーヒー」と名付けられたと考えられているようです。
様々な進化を遂げてきたコーヒーですが、アメリカに伝播した正確な記録は残っていないようです
「1607年にキャプテン・ジョン・スミスがアメリカに初めてコーヒーを伝えた」という話も耳にしますが、これは、ジョン・スミスがコーヒー豆をアメリカに持ち込んだわけではなく、コーヒーの知識を伝えただけという説もあります。
アメリカに残されている古いコーヒーの歴史は1670年代にまで遡ります。アメリカ北東部、ニューイングランドにコーヒーが伝わり、アメリカ初のカフェが誕生。18世紀になるとボストン、ニューヨークにもカフェが立ち並び、アメリカ市民の憩いの場所としてコーヒーが広がっていきました。
その後、アメリカではコーヒーが日常的に飲まれるようになりました。このことをきっかけに1960年代から深煎り豆の人気が高まります。
「第2の波(セカンドウェーブ)」の到来です。この時代はコーヒーに品質や味を追い求める人々が増え始めた時期でもありました。それ以前のコーヒーとは異なる、高品質の豆を深煎りするスタイルのコーヒーが広まり、カフェオレなどのエスプレッソドリンクも広まっていきます。
主導したのは日本でも人気のスターバックスコーヒーをはじめとする様々なカフェ。例えば、スターバックスコーヒーはシアトル系コーヒーの代表格です。創業も1971年とセカンドウェーブの真っ只中。
このようなカフェの台頭もあり、ロゴ入りのカップを持ち歩くスタイルが普及。このスタイルが90年代の日本に上陸します。
日本でも提供されるコーヒーはエスプレッソをベースにアレンジを施した「シアトル系コーヒー」が主流でした。
ロゴ付きのカップを片手に街を歩くことがファッションの一部として認知され、コーヒーが飲み物として以外の価値を発揮し始めたのもこの時期です。
ノルウェー出身のエルナ・クヌッセンはその味覚や嗅覚の鋭さを評価され、コーヒーやスパイスを扱うカリフォルニア州の会社に入社しました。
彼女はその後、コーヒー鑑定士の資格を取得。1974年に刊行された「ティー&コーヒー・トレードジャーナル」という雑誌内で「スペシャルティコーヒー」という言葉を世界で初めて使用した人物としても知られています。
彼女はスペシャルティコーヒーをこのように唱えたのです。
“Special geographic microclimates produce beans with unique flavor profiles.”
ー特別な地理や条件が、独特で香気のあるコーヒーを生むー
さらに彼女は1978年に開かれた国際コーヒー会議の講演でもスペシャルティコーヒー論を唱えています。このことからアメリカでは徐々に「スペシャルティコーヒー」という概念が広がっていきました。そして、1982年にはアメリカ・スペシャルティ協会が設立されます。
以降コーヒー文化は大きく変化していきます。
近年でも話題となっている「サードウェーブコーヒー」。
セカンドウェーブまでは、複数の農園の豆をブレンドして提供していましたが、サードウェーブでは基本的に特定の農園の特定の豆だけを使用。その豆に適した方法でコーヒーを淹れます。
明確な定義が存在しているわけではありませんが、これは浅煎り豆を使った酸味の強いコーヒーを中心としたトレンドでもあります。
また、消費者のみならず生産者に対しての配慮が考えられており、サステナビリティに配慮されていることも特徴と言えるでしょう。
コーヒー豆の生産から消費まで全てを考慮していることに加え、ハンドドリップで一杯ずつ丁寧に淹れることと、「シングルオリジン」であることもサードウェーブコーヒーに求められる条件です(シングルオリジンとは、ブレンドしてない単一の豆を使用しているということ)。
さらに、仲介業者の入らないトレードを重視することで消費者にも作り手や産地が可視化される点も特徴として挙げられるでしょう。
セカンドウェーブを経て、更なる高品質のコーヒーを求める人々により発生したこのサードウェーブの潮流は、その品質だけでなく生産者をも守ることができる仕組みです。コーヒーの生産や維持に対しても非常に優しいものだと考えられます。
アメリカから火が付いたこのブームは日本でも徐々に普及し、近年はさらにフォースウェーブへと発展しつつあるようです。フェアトレードやダイレクトトレードが浸透し、生産者へしっかりと還元されるサステナビリティに配慮されたコーヒーを、ぜひ楽しんでみてください。