2022.12.02アメリカにおけるビールの歴史を紐解く

アルコール飲料として高い人気を誇るビール。日本でも身近なアルコールですが、アメリカも限ったことではありません。

アメリカではクラフトビールやIPAが主流ですが、その歴史は16世紀ごろまで遡ります。今回は、アメリカにおけるビールの歴史にフォーカスし紐解いていきましょう。

1 ビールの誕生は紀元前3000年頃

ビールにまつわる最古の記録は、なんと紀元前3000年頃。

粘土板遺跡「モニュマン・ブルー」に、ビールをつくる様子が楔形文字で描かれていたことが起源と言われています。

最初のビールは、シカルと呼ばれるものでした。粉にした麦芽でつくった「バッピル」というパンを砕いてお湯で溶き、自然発酵させたものです。

ろ過をする工程がなかったので、当時のビールには麦の殻の搾りかすが含まれていたんだとか。

紀元前500年頃になると、鍋で麦汁をつくって自然発酵させる方法で、ゲルマン人がビールを作り始めます。この製法は現在のビールの作り方と同じなんです。

2 アメリカにおけるビールの歴史の始まり

それから時は経ち、世界各国で楽しまれる飲み物となりました。それはアメリカも例外ではありません。

アメリカはクラフトビールが盛んな国としても知られていますが、その歴史はヨーロッパ諸国からの植民地支配が始まり。

アメリカにおけるビールの歴史は16世紀ごろまで遡ります。当時、イギリスやフランス、スペインなどの国がアメリカに新規土地開拓にやってきます。

各国がアメリカの領土をめぐって争いを繰り広げた結果、18世紀頃にはイギリスが多くのアメリカの土地を支配することに。そのため、当時のイギリスでは主流だった上面発酵系のエールビールがアメリカでも飲まれていました。

18世紀後半になると、イギリスと植民地支配下におかれているアメリカとの関係が悪化することに。そしてアメリカ独立戦争が1775年に勃発し、翌年1776年にはアメリカ独立宣言を出したことでアメリカ合衆国が誕生したのです。

3 エールタイプからラガービールへ

1800年代初期に産業革命が起こります。その頃は前述した通り、イギリスから持ち込まれたエールタイプのビールが主流でした。

それから時が経ち、世界のビール製造技術は目覚ましい発展を遂げ、ドイツではラガービールの製造が盛んになりました。

1830年頃にはドイツ系移民がアメリカに移民してくるようになります。そこから下面発酵タイプのラガービールがアメリカでも造られるようになりました。

1842年にはチェコでピルスナーが誕生し、その爽やかな味わいと黄金色に輝く液体は世界の多くの人々を魅了します。また、1800年代後半には冷蔵技術の発達により通年での安定したビール造りが可能となりました。

ピルスナーの人気や、安定した生産量が見込めるなどのメリットが重なったことから、低温発酵タイプのラガービールが世界中で作られるようになりました。この流れからアメリカでもラガータイプのビールが主流となっていきます。

現在でも世界で大人気のアメリカン・ライトラガー「バドワイザー」はこのころに誕生しました。

4 禁酒法の成立

1900年代初期のアメリカでは、アルコール依存症が社会問題として起こります。その背景から1920年にアルコール飲料の製造、販売を規制する禁酒法が成立。

酒の製造が禁止されることによって当時の醸造所の多くは苦境に立たされ、小規模の醸造所を中心にそのほとんどが廃業に追いやられます。

しかしながら、禁酒法によって密造酒や密輸、地下酒場などの多くの不法行為を生み出してしまうことに。この結果を受け、1933年に禁酒法は廃止となります。

その後、バドワイザーやクアーズなどの大手ビールメーカーが市場を独占しだしたため、小規模の醸造所は衰退していくはめに。

生き残った小規模の醸造所も、大手ビールメーカーに吸収合併されていきます。その結果、大量生産が可能なガス圧が強くのど越し爽やかなアメリカン・ライトラガーが市場を席巻するようになったのです。

5 クラフトビールの誕生

1960年代に突入し、アメリカのクラフトビールのムーブメントが巻き起こります。

大手ビールメーカーが席巻していたアメリカのビール市場でしたが、このタイミングからマイクロブルワリーと呼ばれる小規模醸造所を立ち上げるようになりました。

それから品種開発により、アメリカンスタイルのビールが確立されだします。

1970年代には、非常に強い柑橘系の香りを出すホップが特徴のカスケードが誕生。1980年にはシエラネバダブリューイングと呼ばれる、カスケードホップを使ったビールをリリース。その鮮烈な苦味と香りは当時のビール愛好家たちに大きな衝撃を立てました。

これにより、1900年代後半からマイクロブルワリーが爆発的に増加していきます。

6 IPAスタイルの誕生

2000年代に突入するとアメリカンIPAというスタイルが誕生し、世界中へと広がっていきます。

その中でもアメリカ西海岸のブルワリーが得意とする、ホップの鮮烈な柑橘類の香りと圧倒的な苦みが特徴の「ウエストコーストIPA」は世界中で大流行を巻き起こします。

その後もIPAは様々な発展を遂げていくことに。近年ではアメリカ北東部のニューイングランド地方発の「ニューイングランドIPA」などが登場し人気を博しています。

多様性を活かしたアメリカのビアスタイル

アメリカにおけるビールの歴史は、イギリスやドイツなどの国が大きく関係し発展を遂げてきました。

そして現在のアメリカは他国の方が移住してきており、多種多様な民族が共存しています。

アメリカにおけるビール史は、他の国と比べて歴史が浅く、アメリカ特有のビアスタイルというものは少ないです。しかしながら持ち前の多様性を活かしたビアスタイルの進化や融合など今後も目が離せません。