2023.08.08アメリカにおけるジャズ文化について

現代でも耳にするジャズ。

この始まりは諸説ありますが、初めてレコーディングが行われたのは1917年2月26日。オリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンドがビクターからリリースした『Dixie Jass Band One Step / Livery Stable Blues』と言われています。

その当時の表記は「Jass」だったようですが、時の流れの中で「Jazz」へと変わっていきます。

今回はアメリカ文化を考える上で欠かせない音楽の一つ、ジャズの系譜を辿ります。

1 アメリカにジャズが誕生したきっかけ

アメリカはご存じの通り、ヨーロッパからの移民によって造られた国。

16世紀にヨーロッパで中世の封建社会に嫌気がさした人々が新天地を求めてアメリカ大陸にやって来たと言われています。そしてニューオリンズ・ジャズの誕生は、アメリカの黒人奴隷制度とも深い関係があります。

ヨーロッパでは15世紀ほどからアフリカの人々を奴隷として輸入する経済文化ができており、ヨーロッパから移住してきた人々は当然、黒人の人たちも一緒にアメリカに連れてきます。

こうした黒人の人々が、ヨーロッパの室内楽で使われていた楽器(クラリネットやバンジョーなど)でアフリカ・リズムをミックスして作ったと言われるのが「ニューオリンズ・ジャズ」です。

2 ジャズの変遷

ジャズは時代の変化に応じてスタイルを大きく変えてきた音楽でもありました。ジャズが世の中に登場し始めた19世紀末から現代にかけて、どのように歩んできたのかをみていきましょう。

2-1 ニューオーリンズジャズの誕生

ジャズの歴史は19世紀末から20世紀初頭のアメリカから始まったといわれています。

前述のように、アフリカから移住してきた黒人たちによってジャズの最初の形が生まれます。

農作業をしながら辛い体験や愚痴など色々な思いを歌にして歌われてたと言われるブルースがジャズの原型となったとも言われており、ブルースに特徴的な3度、5度、7度の音が半音下がる「ブルーノート」と呼ばれる暗めの響きの音を使ってよく口ずさまれていたものが、後にロックやジャズへ発展していったとも言われています。

1800年代の後半では、南北戦争(1861~1865年)が終結した際に軍団バンドの楽器が出回りました。その楽器を使って黒人達が即興演奏を中心としたアンサンブルスタイルの音楽がニューオーリンズで誕生します。これがニューオーリンズジャズの始まりとなりました。

特に黒人の葬儀の時には、「生前は苦労をしただろうから眠った際は楽しい音楽で送ろう」と演奏をしながら行進していた際にセカンドラインというリズムパターンが誕生したといわれています。この名前の由来は諸説あるそうですが、列の2番目にドラムがいたからセカンドラインと呼ばれるようになったとも。

このように黒人の辛い体験から真逆の陽気さが表れた音楽というのがジャズの原型の一側面でもありました。

ジャズの先駆者でもあるルイ・アームストロングが1920年代にトランペットと歌でジャズを演奏し、ニューヨークやニューオーリンズ等アメリカの各地にジャズを届けたことによりムーヴメントが起こります。

2-2 禁酒法時代とビバップ以降の進化

ジャズは時代や環境とともにその音楽のスタイルが変化していきます。禁酒法(1920年~1933年)時代のキャバレーで、ビッグバンドという豪華なホーンセクションとベーシックなリズムセクションのアンサンブルスタイルの演奏が大流行しました。

1930年代になるとカウント・ベイシー、デューク・エリントン、グレン・ミラー等のビッグバンドオーケストラが誕生し、踊りやすいダンスミュージックのようなスタイルもジャズの進化に加わり、跳ねたリズム(スウィング)を特徴とする「スウィングジャズ」というものが一世を風靡します。

その時代を経て第二次世界大戦が始まり、徴兵等でプレイヤーも減ったこともあって小編成のジャズのスタイルに変わっていきます。

この時代では数々の名プレイヤー達がジャズに革新的な進化をもたらしました。

この小編成のジャズは即興演奏のスタイルも大きく取り入れられ、これがまさにビバップといわれる音楽に発展していきます。

後のジャズ界の帝王とも呼ばれたマイルス・デイヴィスは、このビバップの時代からジャズをプレイし、その後のモダンジャズの創立に大きな影響を与えます。

2-3 ビバップからモダンジャズへ

モダンジャズは今でもカフェや飲食店のBGMなどで耳にする機会も多いスタイルです。多くの人が認識しているジャズらしい音楽とも言えるかもれません。

ビバップはモダンジャズのスタイルへと変化を遂げ、さらにハードバップと呼ばれるスタイルまでも生み出していきました。

モダンジャズでは即興演奏でのソロを長くとっているレコーディングが多く残されているのが特徴です。

これはレコードの収録時間の変化も関係していて、ビバップ時代のレコードの1曲が大体3分くらいのものが多かったのに対し、ハードバップでは6分以上の曲も多く残されており、各演奏者が即興演奏を行う場面も目立つようになりました。

2-4 クールジャズ、モードジャズの誕生

モダンジャズの流れの中で、クールジャズと称されるスタイルが誕生します。かつてのスタイルと比較すると、個々のテクニックよりも楽器編成やアンサンブルを重視し、白人のためのジャズとも評されました。

ですがこのスタイルの創始者は誰よりもジャズの音楽的進化を追求した黒人である、マイルス・デイヴィスでした。

マイルス・デイヴィスは数々の名演奏、名アルバムを誕生させ、共演者もそれぞれのアルバムでモダンジャズを表現していきます。

このようにモダンジャズの進化を様々プレイヤーの音楽スタイルによって当時のニューヨークのジャズシーンを作っていきました。

2-5 フリージャズの発展

そして次に人種差別の問題が、黒人ミュージシャンによるブラックミュージックの進化にもつながっていきます。

その先駆者として、モードの概念と宗教的な思想を特に取り入れていたジョン・コルトレーンの音楽的な進化が加速し、彼の音楽性はより前衛的な次のスタイルへと変わっていきました。

ビバップやモードジャズの行き詰まりを感じていたコルトレーンの音楽は、既成の概念を覆したより自由で革新な音楽へと進化します。

その難解なスタイルは他の演奏者も巻き込み、フリージャズと呼ばれるスタイルへと進化を遂げていきます。

2-6 コンテンポラリージャズ

時代は変化し、ジャズの次の形としてフュージョンというジャンルが登場します。フュージョンとは「融合する」といった意味を持つ単語です。

電気楽器の進化とも関係しており、エレクトリックキーボードやエレキギターを用いた音楽やファンキーな音楽、ロックなスタイル、ソウルなスタイルなど様々なジャンルの音楽とも融合しながら、ジャズは新しい表現を模索するようになりました。

ここでもマイルス・デイヴィスはジャズに電子音楽の要素を取り入れ、ジャズシーンを牽引し、進化させていきます。

以降のジャズのスタイルはそれまでの歴史が作り出した音楽性を各プレイヤー達が取り入れ、80年代頃にまた以前のハードバップのスタイルがニューヨークのシーンで復興したり、モダンジャズの名曲を変拍子にアレンジするなどより現代的に進化したコンテンポラリージャズが誕生しました。

このように時代と社会情勢によってジャズという音楽は進化し、現在ではさまざまなスタイルが演奏されています。

現在も進化を続けるジャズというスタイル

ジャズはアメリカの歴史や文化、社会の変遷と密接に結びついており、常に新しい要素を取り入れながら進化してきました。そのため、ジャズは多様性と創造性に富んだ魅力的な音楽ジャンルとして世界中で愛され続けています。

現代ではジャズにさまざまなスタイルが存在し、伝統的なスタイルから実験的なスタイルまで実に多様性に富んでいます。

異なる民族背景のアーティストが活躍するなど、ジャズの世界は日々進化を続けているジャズは、これからも世界中で楽しまれていくでしょう。