日本におけるヴィンテージファッションの変遷
「古くて価値が高いもの」「年代物」を意味するヴィンテージ。
もともとはワインの製造年を表す言葉でしたが、現在ではファッションでも用いられています。
日本におけるヴィンテージファッションが流行したのは1970〜80年代。現在ではデザインや雰囲気をわざとヴィンテージ風に表現するアイテムも多く、人気を集めるファッションスタイルです。
今回はヴィンテージファッションにフォーカスし、日本における変遷や流行した80年代のスタイルを紐解きます。
日本での古着文化は室町時代から始まっていたんだとか。
そんな遥か昔の時代ですが、当時の衣類は貴重品として扱われていました。その理由は、服を作るための素材調達や手作業での製作に手間がかかるなど、衣類には多くの資金が必要だったためです。
この頃から衣服を長く着用するために古着屋が存在していました。当時の古着屋は衣服の修繕などがメインで、質のいい着物や反物などが取引される場所でもあったのです。
その後、第二次世界大戦が終戦し、日本における古着文化に大きな転機を迎えます。
当時の日本では国民服と呼ばれるカーキ色の衣類の着用が推奨されており、終戦を迎えた日本では物資が不足し苦しい時代でした。
そんな時、アメリカから軍の払い下げ品など、海外古着を物資として輸入される動きが。
輸入された古着を東京の上野や浅草などで売買がスタートし、当時の若者を中心にアメリカのファッション文化に触れていきます。
時代は流れ日本ではバブルを迎えた80年代。
ファッション業界では1950〜60年代のスタイルに注目が集まります。
それが前述した、終戦後にアメリカから輸入された衣類でした。それまでは価値がついていなかった古びたジーンズなどが高値で取引されるなど、一大ブームを引き起こします。
そのような時代背景から古着の価値が変化し、ヴィンテージという言葉が認知されだしていきます。
前述した通り、日本では1980年代に過去のファッションスタイルが流行し、ヴィンテージファッションの始まりでもあります。
では、当時のファッションスタイルとはどのようなものだったのでしょうか。
ここでは80年代のファッションスタイルと男女別の特徴について説明します。
80年代ファッションのキーワードは「ヴィンテージ」「レトロ」で、どこか懐かしさを感じるスタイルです。
クラシカルな花柄やドット、スカーフなどに使われているレトロな模様などが大人気。ケミカルウォッシュのデニムパンツのように、ヴィンテージ感のある質感も80年代ファッションの特徴です。
80年代ファッションでは1950〜60年代に流行したスタイルを取り入れています。
当時は戦後間もなかったことで、海外への憧れを強く持つ若者が多くいました。また映画文化も海外から取り入れられ、ファッションにも反映されていきます。
「ニュールック」と呼ばれるスタイルが、女性の間で人気を集めます。これは1947年にクリスチャン・ディオールがコレクションで発表したもので、女性らしい柔らかい曲線が特徴のスタイルです。
日本でも高い人気を誇りAラインと呼ばれる、スカートの形がウエストから裾にかけてローマ字の「A」のようにまっすぐと広がりをみせるスカートやワンピースが流行します。
また映画文化が流行していた時代でもあり、1954年に公開された「ローマの休日」で主演を務めたオードリー・ヘップバーンのファッションスタイルに多くの女性が虜に。
この波を受け、華やかな色合いのスカーフやネッチカーフを首や頭に巻いたりするスタイルが人気となったのです。
その他にも映画「麗しのサブリナ」でも、ファッションスタイルに大きな影響を与えます。作中でオードリーが着用していたトレアドル・パンツが、サブリナパンツと呼ばれ流行。
それまでは少し地味な印象だったファッションが一気に華やかになり、映画などの影響で洋風スタイルが定着した時代です。
男性ファッションも映画の影響を受け、ファッションスタイルに反映されます。
1955年に発表された「太陽の季節」では、登場する若者に憧れ「太陽族」という言葉が誕生。このサブカルチャーはファッションにも表れ、丸首シャツ、アロハシャツ、サングラスといったスタイルが流行します。
また海外ではエルビス・プレスリーが人気で、革ジャンに黒の細身のパンツにブーツを合わせるスタイルが人気を博します。
このように50年代の男性ファッションは、ワイルドな雰囲気で少し危険な匂いがするようなスタイルが流行した時代です。
ファッションは流行の入れ替わりが激しいもの。
しかしながら、一定の周期で過去に流行ったスタイルがブームになることも少なくありません。
紹介しているヴィンテージファッションも例外ではなく、高い支持を集めるスタイルです。
ファッションスタイルの一つとして確立されたヴィンテージファッション。今後の動向に目が離せません。