2023.01.05世界が認めるオレゴン産のワインその特徴について

プレミアムワインの宝庫として知られるカリフォルニア州以外にも、ワシントン州やオニューヨーク州などで醸造されるワインも注目を集めています。

そんな中、オレゴン州はアメリカではカリフォルニア、ワシントンに次ぐワイン生産量を誇る地域であることをご存知でしょうか?

様々なカルチャーが混ざり合うポートランドを含むオレゴンには実に650軒以上のワイナリーが存在しています。

今回はオレゴン州のワイン事情について掘り下げていきましょう。

1 フランスと似た気候で育まれるブドウ

オレゴン地域の北緯は約45度。この数字は実はフランスとほぼ同様で、気候の条件やテロワール(土地)はブルゴーニュ地方の環境とよく似ています。

初夏から秋にかけては殆ど雨が降らないことに加え、ブドウの冷涼品種を育てるには適している環境なため、ピノノワール(フランスブルゴーニュ地方を代表する赤ワイン用ブドウ品種)が非常に多く栽培されています。

世界で最も影響力のあるワイン評論家としても知られるロバート・パーカー氏は「オレゴンこそ最高のピノノワール産地だ」だと発言しているほど。

実際に、ブルゴーニュの老舗「メゾン・ジョセフ・ドルーアン」や「ルイジャド」「メオカミュゼ」などのワイナリーもオレゴン州に進出しています。

2 オレゴン州を代表するピノノワールは繊細で滑らかな印象

前述のようにオレゴン州を代表する品種であるピノノワール、栽培面積はなんと全体の約60%にも及んでいます。

年間生産量が限られる小規模な家族経営のワイナリーが多いこと、厳格なワイン法が用意されていることから以上に高品質なワインが造られています。

さらにアルコール度数がやや低いことも特徴として挙げられるでしょう。カリフォルニア州などと比較すると若干低めの13%程度で造られるワインが主流です。

そのため、ブルゴーニュのピノノワールのような力強く重みのある印象に対して、エレガントで繊細な味わいのワインが多く造られています。

3 オレゴンのリージョン

「リージョン」とは、ワイン生産地を気候や土壌などの条件によって分けた地域、地方のこと。

世界の中でも優れたピノノワールが収穫できる地域として知られるようになったオレゴン州の土地を知っていきましょう。

ワイン用ぶどうの産地は州の西側に多く、海岸山脈と他の山脈に囲まれた場所に畑が広がっています。比較的冷涼な気候で、火山性の堆積土壌など水はけの良い土壌で育まれます。

中でも地域ごとに特性が存在しているため、リージョンの特徴をご紹介していきましょう。

3-1 ウィラメット・バレー

ウィラメット・バレーはウィラメット川に囲まれる地域。

ポートランドから南に色がる広大なAVA(American Viticultural Areas の略で「アメリカ政府承認ぶどう栽培地域」のこと)です。

年間の温度変化が少なく、全体的に冷涼で高湿度な気候が続きます。

各地域によってワインの個性も異なり、ピノノワールの名産地としても特に有名。他にもピノグリやシャルドネ、リースリングなども栽培されています。

3-2 サザン・オレゴン

オレゴン州南部の産地であるサザン・オレゴン。

カスケード山脈などが連なる山間地に位置しており、温暖な気候で日照量が多く、空気が乾燥しているのが特徴です。

ピノノワール、ピノグリ、リースリングなどが栽培されており、濃厚なぶどうの風味が堪能できる赤ワインと、野性味が強い白ワインが人気のエリアです。

3-3 ダンディー・ヒルズ

ダンディー・ヒルズはオレゴン州ウィラメット・バレーAVAに属するサブリージョン(更に小さく地域を分けた名前)。

このダンディー・ヒルズは起伏の多い地形で標高もさまざま。低地では霜や霧が発生するものの高地ではそういった影響を受けません。

冷涼で穏やかな気候により良質のピノノワールが収穫されます。ダンディー・ヒルズは時にフランス産ワインを凌ぐ高評価を得るほど、非常に評価が高いワインです。

3-4 マクミンヴィル

マクミンヴィルは、ポートランド南西に位置する生産地。

降雨量が少なく、また山脈により冷風からも守られています。それにより個性のある地下水がワインに独特のフレーバーを与えます。

まだ水はけの良い土壌なため高品質のぶどうを栽培することが可能です。毎年7月にはピノ・ノワール祭が開催されることでも知られています。

3-5 リボン・リッジ

海洋堆積物が積もった丘の上にあるリボン・リッジはチュヘイラム・マウンテンズの北西端にあり、ニューバーグとガストンの間に広がっているエリア。

四方が山に囲まれているため、周囲より若干温暖で乾燥しているのが特徴的。

ウィラメット・バレー地域の中でも最も高級なピノ・ノワールが生まれる場所と言われています。

3-6 アンプカ・バレー

アンプカ・バレーは東のカスケード山脈、西の海岸に挟まれるアンプカ川のほとりに広がる栽培地。

冷涼な北部ではピノノワールやピノグリなど、温暖な南部ではテンプラニーリョ、シラーなどが栽培されています。

3-7 エオラ・アミティ・ヒルズ

エオラ・アミティ・ヒルズはポートランド南に位置するエリア。

海岸山脈により海風は遮られているものの、峡谷から冷風が入るため夏もあまり気温が上昇せず穏やかな気候。

この冷風の影響でぶどうはゆっくり熟していくため、凝縮感のある味わいが魅力的です。

3-8 チャハレム・マウンテンズ

チャハレム・マウンテンズはウィラメット・バレー内のAVA。

なだらかな丘陵地に畑が広がる地域です。地中海性気候の影響を強く受け、ピノノワール、シャルドネ、リースリングなどのぶどうが栽培されています。

土壌の特性はさまざまで土壌の質によりワインの個性も大きく異なります。

3-9 ヤムヒル・カールトン・ディストリクト

ヤムヒル・カールトン・ディストリクトはポートランドの南西に位置しており、山脈が多い環境に加え冷涼な気候。その気候を生かし、ピノノワール、ピノグリ、シャルドネ、ガメイノワール、リースリングなど幅広く栽培されています。

排水性の高い砂岩やシルトの土壌であり、酸味が優しくさまざまな風合いの感じられるワインが生産されています。

3-10 レッド・ヒル・ダグラス・カウンティ

レッド・ヒル・ダグラス・カウンティはオレゴン州南東に位置するダグラス郡のAVA。

火山性のジョリー土壌を持ち、水はけが良い環境です。標高300m前後の場所にぶどう畑が広がり、ピノノワールやシャルドネ、リースリングなどが栽培されています。

ワイナリーは「シエナ・リッジ・エステート」1つのみ。

3-11 ローグ・バレー

オレゴン州南部に位置するローグ・バレーでは山間部の谷間にぶどう畑が広がっています。

カリフォルニア州との境界線に近く、温暖かつ乾燥している環境。この地域ではメルロー、シラー、ピノグリ、シャルドネを使ったワインが多く醸造され、赤ワインが全体の7割、残り3割ほどが白ワインです。

3-12 スネーク・リバー・バレー

スネーク・リバー・バレーとは、オレゴン州東部とアイダホ州との間にまたがるAVA。

ほぼすべてのワイン生産はアイダホ州側で行われており、オレゴン州ではAVA北部の一部のみです。

ぶどうは標高650m以上の高地で栽培され、リースリングやシャルドネから作られる白ワインがメイン。

3-13 アップルゲート・バレー

アップルゲート・バレーはスキュー山脈の山麓にあり、3つの河川が流れる場所。

それぞれの川岸で土壌が大きく異なりますが、全体的にはボルドーとよく似た気候を有しています。

この地ではカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラー、ジンファンデルなどが栽培されています。日照量が多いため、全体的に果実味あふれるワインが生産されます。

4 オレゴンワインはなぜ興隆したのか

オレゴンがピノノワールの銘醸地として歩み始めたのは実は1960年代まで遡ります。

ブルゴーニュやアルザスでワイン造りを学んだ「ジ・アイリー・・ヴィンヤーズ」の創設者であるデイヴィッド・レット氏が、ウィラメット・ヴァレーでピノノワールの栽培を始めたのがスタートだと言われています。

その後、1979年にフランスのワイン評価誌「ゴーミヨ」が主催したブラインドテイスティング大会で、ジ・アイリー・ヴィンヤーズのワインがピノ・ノワール部門で10位に入賞します。

更に翌年、ブルゴーニュの名門ジョゼフ・ドルーアンが開催したブラインドテイスティングではなんと2位に入賞。オレゴンのピノノワールのレベルの高さが世界中に広まります。

これを機に、オレゴンのワイン造りは大きな転換を迎えます。

1988年ジョゼフ・ドルーアンが「ドメーヌ・ドルーアン」というオレゴンにワイナリーを設立。

この出来事はフランス人だけでなくオレゴンのワイナリーを驚かせました。これはオレゴンはブルゴーニュの名門が認めるピノの銘醸地としてのポジションを確立した瞬間でもありました。

1990年代には世界的ワイン評論家のロバート・パーカー氏が「ボー・フレール」というワイナリーを設立。21世紀になってからも、ジョゼフ・ドルーアンと並ぶブルゴーニュの名門であるルイ・ジャドが「レゾナンス・ヴィンヤード」を設立するなど、常にワイン業界に新しい風を送り込んでいます。

業界を牽引するまでに成長したオレゴンのワイン

自らに厳しく、環境には優しいオレゴンのワイン。

オーガニック栽培が難しい地域ながらも、サスティナブルな栽培法を重視している生産者が多いのも特徴と言えるでしょう。

生産量が少ないからか、価格もやや高めですが、ピノノワール好きにとっては今や欠かせない産地です。

アメリカらしいブドウの完熟感はありながらも、しっかりと酸の乗った伸びやかなピノらしい余韻を十分に感じさせてくれるワインをぜひ楽しんでみてください。