アイテムを大事に継承するヴィンテージファッション
自分で部屋や家を改装するDIYはもちろん、コーヒーやビールも自分たちで作ってしまうポートランドの文化。
ポートランドは新しさやクリエイティブな文化を大事にする一方で、古いものの価値を理解した上で長く大事に使う「温故知新」の精神も根付いている場所です。
今回はポートランドのヴィンテージ文化の一端を覗いてみましょう。
ポートランドの中でもヴィンテージ物の家具や雑貨が数多く売られている場所と言えば、ポートランド市内の南東のホーソーン・ブルバード通り。
様々なヴィンテージショップが軒を連ねる、ポートランドの名物通りの一つです。
同じく市内南東側のセルウッドも人気が高いエリア。歴史ある穏やかな雰囲気が魅力的。掘り出し物を見つけようと世界中からたくさんのコレクターたちが訪れます。
趣のある表情の町並みやくつろいだ雰囲気の店が立ち並ぶ街をのんびりとショッビングすると、ふと古き良き時代へとタイムスリップしたような懐かしさと安心感に包まれるはず。
日々の忙しさを忘れてアンティークコレクターになったような気持ちになれるエリアです。
その土地で作られたものをその土地で消費する「地産地消」の精神に代表されるように、ポートランドに住む人々は「ローカルファースト」と言われる地元の生産者やブランドなど大切にする意識が高い傾向にあります。
そのため全国でチェーン展開しているような店舗よりも、個人で経営している店舗が圧倒的に多いのが特徴です。
その特性からか常に新しいアイテムを大量に生み出し、消費するという文化とはやや趣向が異なります。
古いものを大事にする文化、すなわちアイテムの背景やストーリーも含めてライフスタイルを楽しむ文化がポートランドにはあります。
現代社会の大きなテーマでもあるSDGsと照らし合わせて考えても、非常に魅力的なファッションへの向き合い方と言えるのではないでしょうか。
古着やヴィンテージファッションが注目されているのもこのような背景があるのかもしれません。
「ヴィンテージ」とは製造から100年未満のアイテムを意味することが多いですが、ファッションにおけるヴィンテージとは一般的に1970年代以前に発売された洋服のことを指します。
その一方で古着は近年発売された洋服、大まかにくくると90年代以降の洋服を指す場合が少なくありません。
しかし最近は、1980年代に発売された洋服でも、ヴィンテージファッションと呼ばれることもあるようです。洋服の他にも、アクセサリーや腕時計などのヴィンテージアイテムは世界中で根強い人気があります。
ヴィンテージファッションを取り扱う店舗によっては「古着」という言葉ではなくあえて「ヴィンテージファッション」と呼ぶ場合も。
古着は「ユーズド」であり、一度使用された中古品全般を意味します。
それに対してヴィンテージは「完成度が高い年代もの」といった意味合いを強く含みます。
近年ではトレンドを追うのではなく自分にあった衣類を少数保有し、大事に使い回すようなミニマリズム的思想を取り入れた楽しみ方が増加傾向にあるとのこと。
素材の良いアイテムを購入し、複数シーズン使用するような「スローファッション」の考えも徐々に浸透してきているようです。
特にポートランドではこのような文化が以前より根付いているため、クリエイティブな街として認識されています。
とはいえ時代背景が大きく異なるアイテムを使いこなすのはなかなか難しいため、普段のライフスタイルの中に少しだけヴィンテージアイテムを取り入れるところからスタートするなどの工夫も必要です。
エシカルファッションに代表されるように、数ヶ月で土にかえる素材を活かした素材を利用したファッションアイテムや、着古した衣類を回収し素材を再利用するなどの取り組みが盛んになってきました。
急速に消費されるファッションではなく、今あるアイテムを大事に使うことがファッションにおけるポイントにもなってきています。
ポートランドの文化のように一つのものを大事に使うライフスタイルが私たちの人生を豊かにしてくれるきっかけになるかもしれません。