「レーヨン」の特徴やお手入れ方法
「光る糸」という意味を持つレーヨン。その名の通り、シルクのような光沢をもつ繊維として知られています。また天然原料由来の「再生繊維」でもあります。
衣料品をはじめ毛布やカーテンなど、その用途は実にさまざま。
木材パルプから採取する植物原料に薬品加工を施して作られているレーヨンは、ポリエステルやナイロンといった石油から作られる「合成繊維」とは異なり、加工処理で自然に還元できるサステナブルな素材でもあるんです。
今回はそんなレーヨンについて知識を深めていきましょう。
レーヨンは天然原料由来の「再生繊維」。木材パルプから採取する植物原料に薬品加工を施して作られています。レーヨンは、ポリエステルやナイロンといった石油から作られる「合成繊維」とは異なり、加工処理で自然に還元できることが特徴です。
現在では衣類や寝装品、インテリアなど身近なアイテムに使用されていますが、始まりはシルクの代用品として開発されたのがきっかけ。
舞台は1884年のフランス。当時は絹(シルク)が製造されていましたが、主に提供されていたのはヨーロッパの貴族たち。当時のシルクの価格は非常に高価だったことから、一般の方には手が届かなかったのです。
そこで、シルクのような生地を広めたいと立ち上がったのがシャルドンネ伯。硝酸セルロースと呼ばれる、レーヨンの原料を開発したのが始まりです。
しかし、硝酸セルロースは燃えやすいことが最大の欠点で、大々的に広まることはありませんでした。それから硝酸セルロースに改良を加え、1898年にビスコース溶液からレーヨンを製造する方法を発明します。
1905年には、イギリスのコートルズ社がビスコース法によりレーヨンの工業生産をスタート。これをきっかけに、レーヨンが世界的に人気を誇る素材に成長していきます。レーヨンの輸入を日本が本格的に開始したのも、このタイミング。
日本におけるレーヨンの製造は1918年のことで、帝国人造繊維(現帝人)で製造されました。その後、東洋レーヨン(現 東レ)などもレーヨンの製造を行い、日本の多くの繊維会社がレーヨン製造を行い今日に至っています。
このような歴史があり、現在の安全性の高いレーヨン生地が主流となったわけです。
シルクのような肌触りのよさはレーヨン最大の特徴と言っていいでしょう。
極細のフィラメント糸に加工を施すことで、軽量性と柔軟性を両立させた素材に。静電気に強く、肌にまとわりつく不快感がない滑らかさもレーヨンの特性です。
上質な光沢感もレーヨンの特徴として代表的なものです。
繊維加工の過程で、長い繊維として生成されるため絹と同じような艶を帯びた繊維が出来上がります。
レーヨンの名がRay(光線)に由来しているのは、この光沢が起源です。
レーヨンは通気性と吸湿性に優れており、一年通して活躍してくれます。サラリとした快適な肌触りや清涼感から、衣類だけでなく寝装具にも使用されています。
レーヨンは柔らかな繊維なため、身に着けたときに美しく波立つドレープが特徴的な素材でもあります。
動きにあわせしなやかに流れるシルエットがエレガントな印象に。高級衣料生地としても使用されているのはこれが理由の一つ。
レーヨンはシルクと同様の特長を持ちながら、手ごろな値段で購入できるのが大きな魅力でしょう。
また、染色液との相性がよく、カラフルな生地を制作しやすいのも嬉しいポイントです。
レーヨンは原料が木材パルプのため、実は水に弱い素材です。
水に濡れると、繊維が膨張し、繊維どうしが引っ張り合うためどうしても縮みが生じてしまうんです。衣類を洗濯する場合は、あらかじめ洗濯表示をチェックしておきましょう。
吸湿性に優れているレーヨンですが、一定の飽和状態になった場合、水分が渇きづらくなってしまいます。
そのため大量の汗をかいたまま衣類を身に着けていると、汗冷えを引き起こしてしまう恐れがあることも気をつけておきたい点。
また少量の水でも染みになりやすく、雨などにも注意が必要です。
水に濡れることで強度が下がり、しわが残りやすくなります。
洗濯機で長時間水につかった状態での放置や脱水はレーヨン繊維に負荷がかかってしまいます。
家庭での洗濯は手洗いが原則で、天候や用途により着用アイテムを選ぶことも大切です。
レーヨンは多くの特徴を持っているため、その用途は実にさまざま。
シルクのような上品な肌触りと、光沢感が魅力なので、ドレスやワンピース、シャツなどのパーティシーンで活躍してくれます。
一方でアロハシャツなどのカジュアルなアイテムにも使用されており、普段着としてもフォーマルシーンでも活躍してくれる生地です。また、肌着や毛布などの寝装品、カーテンなどのインテリアなどでも使用されています。
レーヨンは季節問わず活躍してくれるので、私たちの身近な存在と言えますね。
前述したように、他の生地に比べ扱いが難しいレーヨン。
非常にデリケートですが、ケアをしないと生地を傷める原因になるので、適切な方法でのお手入れが必要です。
まずは、自宅での洗濯ができるかどうかを判断しましょう。その確認方法は、衣類に付いている洗濯表示を確認します。
水洗いが可能か、または可能であれば洗濯機の使用ができるかなどをチェックし判断しましょう。最近ではウォッシャブルレーヨンと呼ばれる洗濯可能な生地を使用しているアイテムも増えていますが、洗濯をする際は洗濯表示をチェックしておくことが大切です。
洗濯表示を見ても判断が難しい場合は、組成表示を確認しましょう。
組成表示は、衣類などの素材の種類とその割合を示したものです。衣類に縫付けられたタグに必ず表示されています。
レーヨン100%であれば、基本的にドライクリーニングが推奨されているので、自宅での洗濯は控えるべきです。レーヨンの割合が低くなればなるほど、自宅でのケアはしやすくなるので組成表示をチェックし判断してみてもいいでしょう。
洗濯表示や組成表示をチェックし、水洗いが可能かどうかを確認しましょう。
レーヨンは前述した通り、水に濡れると縮みやすい性質があります。短時間で洗い終えることがポイントになるため、洗濯機ではなく手洗いがおすすめ。
使用する洗剤はおしゃれ着用の中性洗剤を使用しましょう。
手順としては以下の4つのステップ。
1, 洗面器に水をはり、中性洗剤を規定量入れて溶かす
2, 洗面器に衣類を沈め、手で優しく押し洗う
3, 数回繰り返し汚れが落ちたら、洗面器の水を綺麗なものに替え、再度手で優しく押し洗う
4,付着していた洗剤が落ちたのを確認したら、軽く絞りタオルで挟んで水分を取る
この工程を3分以内を目安に行うことで、傷みを軽減することができます。
その際の注意点は、手で優しく押し洗うこと。決してこすり洗いや揉み洗いなどは避けましょう。
また色落ちしないかの確認も必要です。洗浄時の濃度に薄めた中性洗剤を目立たないところに少量つけます。数分後、白い布などを当てて色移りしないかチェックしましょう。
レーヨンはデリケートな生地なので、洗濯する際はスピードが重要です。失敗してしまう可能性もあるので、思い入れのある衣類の場合はクリーニング店に依頼しましょう。
レーヨンの衣類を自宅で洗濯する際は、干し方にも気をつけることがポイント。
干し方次第では、型崩れやシワの原因になるので注意が必要です。
洗濯バサミに挟んでしまうと跡がついてしまったり、ハンガーにかけると重心が下に寄ってしまうので生地が伸びてしまいます。
レーヨンの衣類を干す際は、形を整えて“平干し”がおすすめ。
これによりシワがついたり、生地が伸びてしまうことを防ぐことができ自然な形をキープできます。
また干す場所は変色と臭いの原因になるため、直射日光を避け室内ではなく、屋外の風通しのいい場所で陰干しにしましょう。
レーヨンの衣類にアイロンをかける場合は、傷めてしまうこともあるため注意が必要です。
アイロンをかける際は、レーヨンは熱に弱い素材なので、80℃〜160℃の低温か中温に設定します。その際、洗濯表示をチェックし温度を設定しましょう。
またスチームアイロンを使用するのは避けてください。必ずドライアイロンでシワを伸ばしましょう。
衣類にアイロンをかけてしまうと、レーヨンの魅力でもある光沢感が失われれしまいます。使用する際はハンカチなどの薄い布を衣類の上に敷き、アイロンをかけましょう。
その際にシワが気になり、何度も同じ箇所を往復してしまうと型崩れやシワの原因となるので注意が必要です。繊維の向きに沿って一定の方向にアイロンをかけていきましょう。
レーヨンの衣類は保管する際も注意が必要です。湿度が高い場所に保管してしまうと、縮んでしまう恐れがあることを覚えておきましょう。
クローゼットなどで保管する際は、除湿剤を使用するなど乾燥させておくことがポイント。また汚れが残ったまま、長期保管してしまうと虫食いの被害にあうこともあります。そのため防虫剤と一緒に保管しておきましょう。
自宅での洗濯が難しいレーヨンですが、着用する度にクリーニング店に依頼するのは費用もがかかってしまうことがネック。またクリーニング店とはいえ、何度も依頼すると生地が弱くなり傷みの原因になってしまいます。
数回の着用であれば、除菌ができる消臭スプレーでケアすることも簡単なお手入れ方法です。その場合、消臭スプレーも水分なので一ヶ所に集中して吹きかけないように心掛けましょう。
レーヨン素材は高級感あふれる肌触りが最大の特徴。静電気に強く、肌にまとわりつく不快感がない滑らかさも嬉しいポイント。これからの暑い季節に着用したい一枚です。
デリケートな一面がある素材なので、お手入れには注意し少しでも長く愛用できるといいですね。
普段のアイテムに合わせるだけで格上げしてくれるレーヨンアイテム。是非この機会にコーディネイトに取り入れてみてはいかがでしょう。